来春の選抜甲子園の出場校決定のための選考資料となる「第153回北信越高校野球大会」は18日、富山市民球場で準決勝2試合が行われ、日本文理(新潟1位)と帝京長岡(新潟3位)が勝って決勝戦に進出した。新潟県勢同士による決勝戦は秋春通じて初めて。両校は来春甲子園で開催される選抜大会出場に前進した。
日本文理は8回に秦碧羽の3ランなどでリードを広げ、敦賀気比(福井1位)の最終回の追撃を振り切って7対6で勝ち、2013年秋以来12年ぶりとなる決勝戦に駒を進めた。帝京長岡は1年生エース左腕の工藤壱朗が星稜(石川3位)の打線を1点に抑え、2対1で競り勝ち、秋は初めて(春は優勝した2024年以来)となる決勝戦進出を決めた。決勝戦は19日10時から同球場で行われる。

日本文理7-6敦賀気比/8回、1点差に追い上げられた日本文理は2死1、2塁から秦碧羽(2年)の左越え3ランで6ー2と引き離す

帝京長岡2-1星稜/9安打を許しながらも粘りの投球で1失点で完投した帝京長岡①工藤壱朗(1年)
◎18日の準決勝の試合結果◎
<富山市民>
①日本文理7-6敦賀気比
→日本文理が決勝へ…12年ぶりの選抜甲子園へ前進

(バッテリー)
気比:鶴田啓人-村雲脩吾
文理:染谷崇史、室橋琉翔-渡邉駿仁
(二塁打)
気比:後藤駿平(2回)
文理:臼木彪牙(8回)
(本塁打)
文理:秦碧羽(8回・3ラン)

5回裏、日本文理は2死2、3塁から四番・渡部倖成の左前適時打で1点を追加し3-0に。渡部は初回の先制打など3安打2打点

日本文理の先発①染谷崇史(2年)は8回2/3を投げて6失点(自責手4)

1点差で逃げ切り、12年ぶりの秋の北信越大会決勝進出と来春選抜出場への前進を喜ぶ日本文理ナイン
◇日本文理・鈴木崇監督の話◇
「本当にきのうまで選手たちと『10対9、11対10でも(勝つ)』と話していたが、敦賀気比さんは8回9回が野球なので…簡単にはいかない。いい形で追加点が入ったが、選手たちを奮い立たせ、なおかつ保守的にならないようにと選手たちと元気を出したが……最後はよく粘ってくれた。先週からの公式戦の中で1球1球の重みと自分たちがやってきたことの繰り返しがうまく出ている。我々は挑戦者で、追いかけるのではなく捉えよう、こんなチャンスはないと奮い立たせていたが、それでも粘りが凄かった。(攻撃は)先週もいい投手と対戦させてもらっているのでそれで育ててもらっている。(右方向の打撃は)練習中は皆でそれを言い合いながらやっていたが、それを実行してくれた結果。(秦の3ランは)大きかった。満塁での残塁数が県大会から多かったので、攻め抜いた末の結果だった。気比さんとの対戦で成長できたので、その分あしたも……という気持ち。(選抜へは)まだ決まった訳ではない。神宮(大会)に行きたいので、掴み取るという気持ちが大事。せっかくのチャンスなのであす全力でいく」
◇日本文理・渡部倖成主将の話◇
「(3安打2打点で)これまで自分が打撃でチームに貢献できていなかったが、きょうは(初回から)繋いで一本出て、点に繋がったことはよかった。敦賀気比も甲子園常連で、挑戦者として戦う中で初回に先制できたことがよかった。チームで徹底した打撃ができてよかった。(9回2死で負傷交代であすの試合への出場は)全然大丈夫。ベンチの奥で勝利の声を聞くことができ、やったあと思った。(あすの決勝へ)勝って、神宮大会に行って、選抜に向けて一丸となってやっていきたい」
◇8回に3ランの日本文理・秦碧羽選手の話◇
「ただうれしい。今までの敦賀気比の試合を見ていて、最後は追い上げてくるチームだと思っていたが、最後は少し焦った。(3ランは)内側に入ってきたスライダーを引っ張った。ファウルになるかなと思ったが、うまく巻いてくれて大きな一発になった。きょうは風もあり、レフト方向の方が飛ぶと思って引っ張った。(打席へは)自分の一発で引き離してやろう、絶対打ってやると思っていた。チームに勢いをもたらすような一打を打てた。公式戦は初本塁打。(選抜へは)目指してきたのは神宮大会。最後に課題が残る結果となった。ここは通過点。しっかり決勝もいい試合をして神宮出場を決めたい」
◆敦賀気比・東哲平監督の話◆
「残念だがこれも実力のうち。相手が強かった。また夏までにしっかり本物のチームにしなければいけないと思う。三番、四番が向こうと違って役割を果たせなかった。(秋に決勝へ行けないのは久しぶりだが)夏一本勝負なので春にシードをしっかり獲って、夏勝ち切れるチームをしっかり作らなければ。(課題は)投手も守備も、なんとか粘って勝ってきたが、最後は剥がれてしまう。本物に近づけなければ」
②帝京長岡2-1星稜
→帝京長岡が秋は初の決勝へ…来春選抜甲子園へ前進

(バッテリー)
帝京:工藤壱朗-松本覇
星稜:小路瑛主、中森斗茂哉-山田倖生、福場瑠大
(二塁打)
星稜:池田玲音(1回)

3回表、帝京長岡は2死満塁から、一塁走者が飛び出し、相手捕手が一塁に送球した間に、三塁走者の④兵藤蒼介(1年)が本盗(記録は三重盗)を決めて1点を先制。この後暴投でもう1点を追加

再三のピンチでも強気の投球で攻めた帝京長岡①工藤壱朗(1年)

秋の北信越大会で初の決勝進出を果たし、来春選抜甲子園へ前進した帝京長岡…左端は2020年に就任した芝草宇宙監督
◇帝京長岡・芝草宇宙監督の話◇
「最高の気分。普段しっかり練習してきた選手たちが大事な試合で力をどう発揮してくれるかと思ったが、結果的には安打も少なく、失策も出たが、思い切ってやろうという声がベンチ内で出ていて、帝京長岡の野球をやれば勝てる、という声が選手たちから出ていて頼もしく思いながら采配していた。(3回の本盗は)選手たちがうまく動いてくれた。とにかく先取点が欲しかった。どんな形でも1点を取ろうというのが我々の野球。いろいろな戦術を選手が練習してきた中の1つのプレー。まだまだいろいろ出していきたい。(工藤投手が完投したが)継投も考えていたが、夏の暑い中での練習試合で球数を投げさせてきたので、ここで発揮してくれた。崩れそうで崩れない、粘りがある。大事なところでの勝負強さを持っている。(選抜へ前進したが)今まであと1つというところで(夏2つ負けて)、なぜウチの野球で負けたのかと反省し、大事なところで選手を動かす、バッテリーも思い切って配球しようと考えた。今までの(夏決勝の)2つの敗戦をいかさないと今までの選手に悪いと思った。鈴木主将が1年生を理解し、結果を出すために考えながらやってくれた。(決勝の相手が日本文理だが)新潟県全体でレベルが上がってきていることをこの北信越大会で発揮できている。新潟同士でやれるのはすごくうれしい。新潟県同士だが1つの全国レベル(の相手)だと思って戦いたい。絶対に負けたくない。県大会では申し訳ないゲームをやってしまったので、しっかりやる」
◇帝京長岡・鈴木祥大主将の話◇
「本当にうれしい。(星稜が相手に決まってから)投手の特長を把握して練習してきた。勝ち切れて成果が出せたと思う。父(春樹氏=柏崎、新潟県央工の監督として甲子園出場)も祖父(春祥氏=中越の監督として7回甲子園に出場)も選手として甲子園に出ていなかった。鈴木家で初めて選手として甲子園に出ることができればうれしい。チームは北信越大会に入る前に日本文理にリベンジしてやろうという気持ちで入った。最高の舞台で(県大会準決勝の)リベンジができる。皆も気合いが入っている。最後にリベンジして神宮大会を決めたい」
◇帝京長岡・工藤壱朗投手の話◇
「最後(空振り三振)は真っ直ぐ。直球は後半良かった。まずは準決勝に勝つことができてうれしいが、目標の北信越優勝まであと1勝まで来たので、絶対に勝ち切って一番になりたい。走者を出し過ぎたが、1失点で抑えることができたのはバックやチームメイト、応援してくれる人を信じて投げることができた。相手投手も1年生の左腕で滅茶苦茶意識した。中学で全国制覇していると聞き、バッテリーが1年生で絶対に負けたくなかった。(6回1死満塁のピンチで一直併殺だったが)相手の主将で絶対抑えたかった。ここを切ったら勝てるという自信があった。バックを信じ切れてよかった。(9回三者凡退で)9回をしっかり押さえて勝ち切らなければ意味がないと思った。攻めようと思って投げた。3年生が夏に悔しい思いをして、『次に勝たなければ意味がない』と言われていた。練習でも3年生にサポートしてもらい、感謝している。星稜というチームにどう向かって行くかを1週間考えながらやってきた。ここに来たのは優勝するために来た。(日本文理は)一度負けている相手だからこそ、次は絶対に勝たなければいけない。終盤勝負できょうより成長した姿を見せたい」
◆星稜・山下智将監督の話◆
「無駄な失点が痛かった。こういう競った試合はミスした方が負ける。走塁も守備でもミスがあり、走攻守すべてでもう一回やり直し。(1年生で先発した)小路は気持ちが入っていてよく投げた。きょうの試合でたくさん反省をもらったので、勝って次に繋げて反省をいかしたいと思っていただけに残念。(帝京長岡の印象は)少ないチャンスをものにする、ウチのこともよく研究されていた。しぶといチーム。工藤くんがいい投球をしていて全く衰えなかった」
◎19日の決勝戦の試合予定◎
<富山市民>
日本文理(10:00)帝京長岡


(取材・撮影・文/岡田浩人)