【BCL】さらば新潟…①清水章夫監督「選手を温かい目で見守って」

ルートインBCリーグの新潟アルビレックスBCで2年間、監督としてチームの指揮を執ってきた清水章夫監督(45)が年末で退任する。日本ハム、オリックスで先発や中継ぎとして活躍した元左腕。2010年に現役を引退した後は野球の現場から離れていたが、2019年に第8代の新潟アルビレックスBCの監督に就任。1年目の昨季は前期優勝マジックを点灯させながらも逆転で優勝を逃し、前期・後期ともに東地区2位。2年目の今季はコロナ禍で地区割りや試合数が変更される中で中地区グループCで2位となり、昨季に続いてプレーオフ進出を逃した。「初めての土地で2年間、野球が大好きな子たちと一緒に過ごすことができた。新潟に来てよかった」と振り返るとともに、退任にあたって「去りがたい」としみじみ。来季も新潟でプレーする選手たちへ、そして新潟県民にメッセージを残した。

2年間の新潟での監督生活を振り返る清水章夫監督

「新潟に来てよかった。初めての土地で2年間、野球が大好きな子たちと一緒に過ごすことができました。成績のことはありますが、純粋に野球が好きで、必死に取り組む選手たちと一緒に野球ができたことは有り難かったです」

2年間の監督生活を穏やかな表情で振り返った清水監督。8年ぶりに野球界に復帰した2019年は前期、後期ともにわずかに優勝に届かず、東地区2位でプレーオフ進出を逃した。そして2020年、コロナ禍で開幕が約2か月余延期となり、シーズンも当初の70試合から60試合に減った。

「開幕が延期になっても『まだまだ準備できる』と前向きに考えるようにしました。
(開幕した後)『やるからには勝ちたい』『一日一日、目の前の1試合を勝とう』と言ってきました。結果として今季は勝てない試合が多かった。でも、選手が必死にやっていた姿は見ていました。あとは試合に出した選手が伸び伸びとやってくれれば、全力で楽しんでくれれば、と思っていました」

2020年の結果は21勝35敗4分で中地区グループCで2位。9月にはまさかの10連敗を喫した。ライバル福島に負け越し、プレーオフ進出はならなかった。シーズン終了後、今季限りでの退任が発表された。

「10連敗は自分の人生でも初めてのことでした。目先の1試合、と思って戦っていましたが、負けのイメージがチーム全体に膨れ上がってしまいました。苦しい展開を追いついた試合もありましたが、その次の回にサヨナラ負け…これで勝たれへんのか、と思う試合もありました。でも負けたら監督としての自分の責任です」


8年ぶりに現場復帰 新潟で初めて「指導者」として一歩を踏み出した

NPB(日本野球機構)で13年のプロ生活を過ごした。新潟で初めて「独立リーグ」という環境に触れ、NPB入りを目指す若き選手たちと日々を過ごした。その中で自分自身がNPB入りを目指した頃の気持ちを思い出した。

「自分自身がNPBに行けた一番の理由は『近畿大でエースになったらプロ野球選手になれる』と思ったことです。そこから逆算をしました。高校時代は軟式野球部。大学で硬式をやりました。そこで自己流ですが工夫して練習に取り組みました。ランニング、筋トレ、キャッチボールの質…アイツが打たれたなら仕方がないと思われるくらいの練習をしました。それが実ったのが大学3年の秋でした」

大学4年の秋にドラフト1位で日本ハム入りを果たした自身の経験を踏まえ、独立リーグで夢を目指して汗する選手たちを叱咤し、そしてエールを送る。

「独立リーグの選手たちはまだまだ野球がうまくない子たちです。甲子園で活躍をした選手は一握り。ほとんどが高校や大学でレギュラーになれなかった選手たちです。目標に向かって、自分には今何が足りないのかと考えて1人1人が取り組まなければ…目標はいくらでもも変えることができます。目標に届かなかったとマイナス思考にならず、まずできる目標に変えて、それを達成していくことでプラス思考にしていくこと。『楽しむ』の意味を掘り下げてほしい。練習でしか自信はつきません」

サポーターとの交流を大切にしてきた清水監督は、フェイスブックやツイッタ―といったSNSでも自らの言葉で発信する指導者だった。

「今までもやってきたのでそれを続けただけですが、1人でも自分の気持ちがわかってもらえればと思ってやってきました。後ろ向きなコメントはしたくないので、前向きなことを発信してきました。自分の発信を選手も見てくれていて、連敗中でも何か考えてほしいなと思ってつぶやいてきました。それは選手に対しての発信でもありました」

昨年のドラフトでは樋口龍之介、長谷川凌汰の2人が日本ハムから育成指名を受けた。指導者として確かな足跡を残し、2年間過ごした新潟を離れ、関西に戻る。新潟に感謝の言葉を残して。

「樋口や長谷川の活躍は、監督をやったご褒美がもらえた気がしました。監督として新潟に呼んでもらって、出会った選手たちがこれからの活躍で楽しませてくれる…どこにいても彼らがプレーする限り…人生の楽しみが増えました」

「新潟は温かくて優しい人が多く、いつも皆さんからフレンドリーに接してもらいました。そして美味しい日本酒をいっぱいいただきました(笑)。去りがたいですが、去らなければいけない。来年以降もアルビレックスが存在する限り、選手は頑張るので、温かい目で見守っていただければうれしいです」

※清水監督のインタビューは2021年1月発売予定の「新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ オフィシャル・イヤーブック2020」で詳しく掲載予定です

(取材・撮影・文/岡田浩人)