NPB(日本野球機構)ドラフト会議が20日、東京都内のホテルで開かれ、新潟県関係3選手が指名を受けた。新潟市出身で立教大4年の荘司康誠投手(22歳・新潟明訓高出身)はロッテと楽天が1位指名し、抽選の結果、楽天が交渉権を獲得した。新潟県関係のドラフト1位指名は31年ぶり。長岡市出身で日本文理高3年の田中晴也投手(18歳)はロッテが3位で、帝京長岡高3年の茨木秀俊投手(18歳)は阪神が4位で指名した。
楽天の1位指名を受けた立教大・荘司康誠投手(新潟明訓高出身)
◎「一流の投手に」…楽天1位・荘司康誠投手◎
楽天の1位指名が決まり、埼玉県新座市の立教大キャンパスで記者会見した荘司投手は「一番はほっとした気持ちが強い。今までお世話になった方々、家族の姿が浮かんだ」と喜びを表した。楽天の印象について「東北の皆さんとの強い絆、ファンに愛されている球団」と話し、対戦したい打者について「パ・リーグなのでソフトバンクの柳田(悠岐)選手、オリックスの吉田(正尚)選手といった素晴らしい打者と対戦したい」と目を輝かせた。
荘司投手は188㌢の長身から投げ下ろす150㌔台中盤の直球と角度のある変化球が特長。会見に同席した立教大の 溝口智成監督は「リーグ戦で活躍し始めたのはまだ1年くらい前。下級生の頃を考えるとよくぞここまで評価される投手になった。まだまだ伸びしろがあり、これからの成長、大きな可能性を秘めている投手」と期待を寄せた。
新潟明訓高3年時は春夏ともに初戦敗退で涙を流した。立教大でも2年秋までは右肩のケガに悩まされた。しかし地道なトレーニングで体づくりに励み、3年春にリーグ戦で先発を任されるとその後は大きな飛躍を遂げた。4年生となった今季は春のリーグ戦で2勝を挙げた。荘司投手は「ケガから始まった大学野球生活だったが、自分を客観的に見つめ、何が足りないかを考える力をつけることができた。いわゆる“野球エリート”いう人生ではなかったが、自分を信じてやってくることができた」と振り返った。
最速150㌔台中盤の直球を投げ込む荘司康誠投手
その上で「これからが勝負。地に足をつけて一歩一歩成長できたら」と前を見据え、「まずは一軍に定着すること。一流の投手になれるよう頑張りたい」と目標を語った。
ドラフト会議の直後には楽天の石井一久GM兼監督が指名あいさつに訪れた。交渉権獲得と書かれたクジに石井監督が「無限の彼方へ、さあ行くぞ」とのメッセージを記して、荘司投手に手渡した。石井監督は「長く楽天の中でエースとして君臨できる投手と思って指名させていただいた」と期待を寄せた。
指名挨拶に来た楽天・石井一久GM兼監督と。「交渉権獲得」と書かれたクジを渡された
◎「大きなスケールの投手に」…ロッテ3位・田中晴也投手◎
指名の瞬間、傍らにいた鈴木崇監督が肩を叩いて祝福すると思わず笑みがこぼれた。記者会見で田中投手は「この日を夢見ていたので率直にうれしい。ようやくスタートラインに立てた」と喜びを噛み締めた。
186㌢92㌔の体格から投げ込む最速150㌔の直球が最大の魅力。一方で高校通算20本塁打超と長打力もあり、打者として評価をする球団もあった。ただ本人は「プロの世界では投手一本で勝負したい」と決意を固めている。
ロッテという球団の印象について「佐々木朗希投手や若手がたくさん出ている。その一員になりたい。間近で練習やプレーを見ることができるのはうれしい」と先輩たちからどん欲に学びたいという姿勢を見せた。対戦したい打者として「(オリックス)吉田正尚選手、(ソフトバンク)柳田悠岐選手といった日本を代表する打者と対戦したい」と目を輝かせた。
指名の瞬間、隣にいた鈴木崇監督(右)と握手して喜びを分かち合う
鈴木崇監督は「(中学生だった)田中に初めて会いに行った時、ここまでの選手(プロ野球選手)になろうと呼びかけたが、本当に夢を現実にしてくれた。これからの日本文理の選手たちに励みになる」と喜びを口にした。
高校時代は敗戦を経て、自分を成長させてきた。田中投手は「1年秋の加茂暁星戦、2年春の関根学園戦…負けて悔しい思いをしたからこそ、成長に繋がった。負けたこと、失敗したことから学ぶことが大きかった」と振り返った。
「将来的には日の丸を背負って世界に通用する、いろいろな人に影響を与えられる、大きなスケールの選手になりたい」…プロでのさらなる成長を誓っている。
最速150㌔の直球が武器の田中晴也投手 プロでさらなる成長を誓う
◎「最多勝を狙いたい」…阪神4位・茨木秀俊投手◎
マウンドではどんな場面でも決して表情を変えなかった男がその瞬間、安どの表情を浮かべた。
「いつ呼ばれるかわからず不安だった。名前を聞いた瞬間にうれしさがあふれた。4位という評価はうれしい」
北海道札幌市の出身。高校時代は甲子園で活躍し、日本ハムで投手として活躍した芝草宇宙監督の指導を受けるため、約800㌔離れた長岡市にやってきた。しなやかなフォームから投げ込む直球は最速147㌔をマーク。キレのあるスライダーとブレーキの効いたチェンジアップを武器に今夏の新潟大会では三振の山を築き、チームを初めて夏の決勝戦に導いた。
最速147㌔の直球を武器に、今夏の新潟大会ではチームを初の夏決勝に導いた
ただ、聖地にはあと一歩届かなかった。プロではその甲子園が本拠地となる。
「甲子園で高校時代の借りを返したい。両親、チームメイトへの感謝の気持ちをプレーで恩返ししたい」と活躍を誓う。目標とする投手は常々「勝てる投手」と口にする。夏の決勝で敗れた日本文理・田中晴也投手はロッテから指名を受けた。セ・リーグとパ・リーグ、東西に分かれるが、「もし投げ合うことがあったら今度は負けない。次は勝つ」と力を込める。
「西勇輝投手のように、勝てる投手になりたい。(対戦したい打者は)三冠王の村上宗隆選手。先発ローテーションを任される投手になって、最多勝を狙いたい」
阪神は帝京長岡と同じ“縦ジマ”のユニフォーム。まずは体づくりから始まるが、「熱いファンが多い」と話す甲子園のマウンドで躍動する日を目標に、持ち前のクールな投球術に磨きをかける。
プロでの目標「最多勝」と記した色紙を持つ茨木投手
(取材・撮影・文/岡田浩人 撮影/武山智史、横山満)