甲子園球場でおこなわれている第96回全国高校野球選手権大会で12日、新潟代表の日本文理が5-2で大分代表の大分をくだし、初戦を突破した。日本文理が夏の甲子園で勝利を挙げるのは準優勝した2009年以来で5年ぶり。初戦の後に組み合わせ抽選がおこなわれ、日本文理の2回戦の相手は愛知・東邦と決まった。大会8日目(8月18日予定)の第2試合におこなわれる。
◎12日の1回戦の結果◎
日本文理5-2大分
大分 100 010 000 =2
文理 000 200 30× =5
(バッテリー)
大分:①佐野-今川
文理:①飯塚-鎌倉
(本塁打)
文理:新井(4回2点)、星(7回2点)
◎戦評◎
日本文理が終盤に集中打で勝ち越し。大分の好投手・佐野を打ち崩した。
日本文理の先発投手・飯塚は立ち上がりに制球が定まらず、初回先頭の井上に三塁打を打たれた後、2番河室に適時打を浴び大分に1点を先制された。ただその後、捕手の鎌倉が二盗を刺すなど、失点は最少に食い止めた。
3回まで毎回安打で走者を出すも無得点だった日本文理は4回、走者を2塁に置いて7番新井が左翼ポール際に2点本塁打を放って逆転した。
日本文理の飯塚は直後の5回に四球で走者を出すと、1番井上にこの日2本目となる三塁打で同点に追いつかれた。
2-2で迎えた7回、日本文理は8番鎌倉が右中間二塁打でチャンスを作ると、9番飯塚が中前に運び1点を勝ち越し。さらに続く1番の星が142キロの直球を右翼スタンドに運び、さらに2点を追加した。
日本文理の投手飯塚は9回を投げ、被安打8。5回までに6四球と制球に苦しんだが、中盤以降は要所を締め、145球の粘投で完投。去年夏、今年春に続く甲子園3度目の登板でようやく勝利をつかんだ。打線は大分の好投手佐野から13安打を放った。ただ残塁が9と次戦に課題を残した。
◇日本文理・大井道夫監督の話◇
「去年夏、春の選抜と勝てず・・・選手たちがよくやってくれた。うちは終盤に自信を持っているので何とか踏ん張れと(投手の)飯塚に言っていた。7回によく突き放してくれた。(5番への代走は)片岡がタイミング合っていなかったので、代走を出して投手を揺さぶろうと考えた。(走者が出て送りバントの考えは)ないですね。ウチは打つだけのチームだから。打撃では選手たちが甘い球を狙っていた。それを確実に打っていた。(フライアウトが少なかったが)選手は叩く意識を持っていた。相手投手も高校球界を代表する投手なので、そうは打てないと思っていたがよく打った。ただ残塁が多かった。13安打で5点じゃ。監督の責任だな・・・。飯塚は本来の調子ではなかったが、よく粘って放った。(2回戦の相手が東邦で)いいチーム。ここまで来たら何とか胸を借りて頑張りたい。飯塚が5回まで3失点くらいまで抑えてくれれば、打撃で5点取ることを目指したい」
◇日本文理・池田貴将主将の話◇
「(ようやく校歌を歌えて)嬉しかった。スタンドと一体となって校歌を歌えて、初めての感動を味わえた。(序盤先制を許したが)新潟大会の準決勝、決勝でリードをされた試合をひっくり返したので焦りはなかったし、リードをしても神宮大会決勝(8点差を逆転負け)と春の選抜での豊川戦(2度のリードも追いつかれサヨナラ負け)で最後まで力を抜いてはいけないということを学んだので、きょうは最後の最後まで攻め切れた。新潟大会では140キロを超える投手と対戦していなかったので、きょう勝てたことは次につながる。5月の福岡県での招待試合で対戦した投手が150キロのボールを投げていて、初めて体感した速度だったが、そこで経験できた分、きょうしっかり活かせたと思う。(佐野投手は)低めの変化球がいいところに決まっていたので、途中からまっすぐに絞っていこうと言った。13安打だったが5点どまりでまだ課題がある。ただ安打を重ねられたことは自信になる。去年夏と今年春に甲子園を2回経験できたことが大きくて、落ち着いた入りができたと思う。2009年の準優勝の先輩たちは凄く打つチームだった。自分たちも負けじとそれに続きたい。(次戦は愛知・東邦で)準優勝の先輩も愛知県に負けているし、自分たちも選抜で愛知県(豊川)に負けている。色々教えてくださった先輩たちに恩返しするため絶対に勝ちたい」
◇日本文理・飯塚悟史投手の話◇
「立ち上がりでストライクをしっかり取れずに、ストライクを取りにいったボールを打ち込まれてしまった。(外の制球に苦しんでいたが)ボール1個分ずれてしまっていた。そこを修正できるように、ストライクを取るボールが甘かったので、そこをちゃんと投げきれるように次に向けて修正したい。中盤からは変化球を多めに、インコースのストレートを増やして投げた。(9回3つのアウトを三振で抑えたが)1人走者を出してしまったが、とにかく0で抑えることを考えた。次の試合では初回からしっかり0で抑えたい。3点以内に抑えれば、みんながしっかり取ってくれると思うので、1点を取られても焦らず自分の投球をしたい」
◇日本文理・捕手の鎌倉航選手の話◇
「(春の選抜、9回裏の三塁悪送球で同点になった)あの試合からキャッチボールを一からやって来た。苦しい場面でいかに投げ切るかを意識してやってきた。そういう意味では(盗塁阻止や牽制アウト、バックアップからの送球で走者を刺し)しっかり投げ切ることができた。去年夏、今年春と経験したことで、冷静に試合の流れを見ることができた。1つ自分が成長できたと思う。何より今日は飯塚が踏ん張って投げてくれたのが大きい」
◇日本文理・4回に逆転2点本塁打を放った新井充選手の話◇
「打ったのはストレート。1打席目にチャンスで三振して悔しい結果だった。(本塁打の打席は)初球から振っていこうと思った。全員でライナーの強い打球を打っていこうと話し合っていたので、その延長線上で入ってくれたと思う。この後も一戦必勝、コツコツとつなぐ野球でやっていきたい」
◇日本文理・7回に2点本塁打を放った星兼太選手の話◇
「ずっと最初から飯塚さんが粘りの投球を続けて、チームのために頑張ってくれていたし、(7回には)鎌倉さんが飯塚さんのヒットで気持ちの入ったヘッドスライディングで生還したので、自分も飯塚さんに1点でも多くプレゼントしたい気持ちだった。前の打席でもヒット打っていたので自信を持って打席に入った。次の試合も先頭で初球から思い切り振っていって、チームにいい流れを呼び込みたい」
(取材・文/岡田浩人)