ユニフォームを着て、エコスタのグラウンドに立つのは“あの日”以来となる。
「地元なのでやりやすさはあります」
そう言うと新人左腕・山田健登(新発田高ー神奈川大)は笑顔を見せた。
高校時代以来となるエコスタのブルペンで投げ込む山田健登(新発田高ー神奈川大)
2013年7月、新発田高3年で迎えた最後の夏。快速球と鋭いスライダーを武器に2回戦(対新潟青陵)では1試合に18奪三振で新潟大会新記録を樹立するなど、山田は4回戦までの3試合で27回を投げ44奪三振をマーク。エースとしてベスト8進出の原動力となった。エコスタでの準々決勝(対新潟工)でも前半から快調に飛ばした。
しかし6回、山田の体に異変が起きる。脇腹を痛めて失速。逆転負けを喫した。後にろっ骨を骨折していたことが判明した。プロのスカウトも注目していた山田だったが、強豪・神奈川大への進学を決めた。
高校時代、エコスタのマウンドに立つ山田
大学でも前途は洋々に見えた。しかし、入学間もない練習で「暴投を投げてしまった。そこからおかしくなった」とフォームを見失ってしまう。期待されて入学したが、「4年間、全然試合で投げることができなかった」と振り返る。精神的にも厳しい時を過ごした。ただ野球部には4年間在籍した。大好きな野球を諦められない自分がいた。
卒業後の進路を考えた時、「まだ野球を続けたい」と考えた。プロのスカウトも山田の進路を気にしていた。「可能性が少しでもあるのならば」と地元の新潟アルビレックスBCでの挑戦を決めた。
キャンプ初日からブルペンに入り、46球を投げ込んだ。代名詞だった縦に鋭く曲がるスライダーは健在。ブルペン投球を見つめた加藤博人監督は「あのスライダーをいかす工夫が必要」と話し、早速フォームのアドバイスなどを送った。
キャンプでの練習に臨む山田
山田は言う。
「大学では実戦で投げることができなかった。まずはキャンプでしっかり投げ込んで、実戦で投げる経験をしたい。そこからチームの力になっていければと思う」
まずは打者相手の実戦感覚を取り戻すことが先決。お手本となるのが、同じように大学では実戦経験がなかったものの、新潟アルビレックスBCから昨秋ソフトバンクから育成指名された左腕・渡邉雄大(中越高ー青山学院大)のケースである。渡邉は自分の特徴をいかし、投球技術の工夫次第ではNPB入りを果たせることを証明した。
自主トレ期間での投げ込み、そして10日のキャンプ初日の練習を経て、山田の表情に明るさが見えた。
「徐々に自信は出てきた。不安はあるが、やってやろうという楽しみもあります」
4年ぶりに帰って来た地元で復活の投球を見せるため、止まっていた山田の時計の針が再び動き始めた。
※関連過去記事「けが乗り越えリベンジ果たす…新発田・山田健登投手」
https://www.niigatayakyu.com/archives/1271
(取材・撮影・文/岡田浩人)