第97回全国高校野球選手権・新潟大会が10日開幕します。チームをまとめ、引っ張ってきたキャプテン(主将)のそれぞれのドラマを追った(上)(中)(下)の3回シリーズを予定していましたが、今回は特別篇です。秋春連覇し、優勝候補の本命と言われる中越。四番打者、そして主将というチームの中心選手を襲った衝撃的なアクシデント・・・開幕直前、監督は、チームは、そしてケガをした本人は、この危機的状況をどんな思いで乗り越えようとしているのでしょうか。
開幕前日の9日、長岡市の中越高校グラウンドに姿を見せた主将の斎藤颯(17)。その姿はあまりにも痛々しいものだった。両腕には松葉杖。右足には大きなサポーターが巻かれていた。一目見て、そのケガが軽いものではないと悟るには十分だった。
中越の斎藤颯主将 6月25日の練習中に右足首骨折の重傷を負った
アクシデントは6月25日の強化練習最終日に起きた。サードで守備ノックを受けていた斎藤が三塁線へのボールを捕球した瞬間、「ピキッ」という音とともに倒れこんだ。右足首に激痛が走った。
長岡市内の病院ですぐに検査を受けた結果は、本人や周囲の想像を超える重傷だった。
・・・右足首くるぶしの疲労骨折。
医師からケガの程度を聞かされた斎藤は「何も考えられなかった」という。
「このチームは主将の斎藤を中心とした大人のチーム」
本田仁哉監督は常々そう口にしてきた。
斎藤が1年生で入学してきた時からそのリーダーシップに惚れ込んだ。
時に仲間に対して厳しい言葉でまとめ、時に監督にも直言するその度胸に、本田監督は「コイツを中心にして甲子園で勝てるチームを作る」と心に決めた。
その期待に斎藤を中心とした現3年生は応えた。去年秋は日本文理を破り、県大会を制覇。北信越大会では準決勝で敗れセンバツには届かなかったものの、春の県大会でも優勝を飾った。12年ぶりの夏の甲子園出場へ、中越は「本命」として夏を迎えようとしていた。
不動の四番打者としてチームをけん引してきた斎藤主将
順調に調整を重ねてきた中で起きたアクシデント。
その夜、医師の診断結果を聞いた本田監督は「本人にどう言葉をかけていいのか正直わからなかった」と話す。
携帯電話を握り、「選手に対しては初めて」(本田監督)というメールを送った。
『チームは必ず何とかするから、頼むからグラウンドに立ち続けてくれ』
斎藤からはすぐにメールが返ってきた。
『今は自分のことよりも、チームのことしか考えていません。僕は大丈夫です。必ずこのチームで甲子園に行きます』
斎藤は既に気持ちを切り替えていた。
本田監督はそのメールを見て、1人涙を落とした。
「改めてすごいヤツだと思いました。こいつがいたからここまで来ることができた。こういうキャプテンがいて、こういうチームなんだということをできるだけ多くの人に甲子園で見てもらいたい・・・そう思いました」
斎藤主将と本田仁哉監督 強い絆で結ばれている
30日に手術を受けた。「生まれて初めて」という1週間の入院期間で斎藤は自分の野球人生を振り返っていた。イチロー選手、川﨑宗則選手・・・気になる野球選手の本を読んだ。
「川﨑選手はマイナーを経験して、辛い時期があってもずっと野球を続けている。自分も改めて野球が大好きなんだなと実感しました。ケガをして見えたこともありました」
「見ての通りだ」
退院後、松葉杖をつきながら、チームメイトの前に姿を見せ、ケガの程度を打ち明けた斎藤。その姿にチームメイトが声をあげた。
「颯(リュウ)を甲子園に連れて行こう!」
声をあげた三番打者の小林史弥が言う。
「斎藤はこのチームの中心。リュウを甲子園の土の上に立たせよう、と全員で誓いました」
「チームのためにできることは何でもやるから、みんなを信じているから、甲子園に連れて行ってくれ」
斎藤はみんなの前で頭を下げた。頬にはケガをした後初めて流れる涙が伝っていた。
ティー打撃でトスをあげる斎藤主将(左)
「ラスト!」「よし!」
開幕前日、グラウンドには斎藤の声が響き渡った。
斎藤は仲間のためにトスをあげていた。
新潟大会の出場は間に合わない。
「甲子園で打席に立てるかどうか」(本田監督)だという。
それでも斎藤は背番号5を付けてベンチ入りする。「精神的支柱」(本田監督)という斎藤の存在はチームにとって大きい。
「ベンチでは大きな声を出して自分ができる精一杯のことをしたい。新潟大会は仲間に任せて、しっかりケガを治そうと思います。そして甲子園で打席に立つ、そのイメージはできています」
しっかりとした口調で答える斎藤。開会式はスタンドで仲間の行進を見守る。
日の暮れたグラウンドでは、部員全員がランニングをしていた。
斎藤はその様子をじっと見つめていた。その姿は紛れもなくチームの中心・キャプテンだった。
ランニングの様子を見守る斎藤主将 背番号5を付けベンチ入りする
(取材・撮影・文/岡田浩人)
がんばれ中越、絶対甲子園だ‼️
越のユニフォームが甲子園で見れることを期待してます!
応援してます、頑張っ!!
お前らが1年生の時からずっと見てきた。
メキメキと力を付けてここまで強くなった。
本当にがんばってほしい、甲子園行くしかない!